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ステージ別乳がんの治療方法

病期(ステージ)と、それに合わせた治療法

乳がんという診断がついた場合、がんが乳腺の中でどの程度広がっているか、遠隔臓器に転移しているかについての検査が行われます。 乳がんの広がり、すなわち乳房のしこりの大きさ、乳腺の領域にあるリンパ節転移の有無、遠隔転移の有無によって大きく5段階の臨床病期(ステージ)に分類され、この臨床病期に応じて治療法が変わってきます。
また同じ病期でもがんの広がりや性質によって治療法が違う場合がありますから、担当医に十分な説明を受けてください。

0期

乳がんが発生した乳腺の中にとどまっているもので、極めて早期の乳がんです。
これを「非浸潤(ひしんじゅん)がん」といいます。

このステージでの治療法

房切除術、または乳房部分切除術と放射線照射を行います。
術後に温存乳房、あるいは反対側の乳房での再発を予防するためにホルモン療法を行うこともあります。

I期~IIIa期

I期: しこりの大きさが2cm(1円玉の大きさ)以下で、わきの下のリンパ節には転移していない、つまり乳房の外に広がっていないと思われる段階です。

IIa期: しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節への転移がある場合、またはしこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がない場合。

IIb期: しこりの大きさが2~5cmでわきの下のリンパ節への転移がある場合。

IIIa期: しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、しかもリンパ節がお互いがっちりと癒着していたり周辺の組織に固定している状態、またはわきの下のリンパ節転移がなく胸骨の内側のリンパ節(内胸リンパ節)が腫れている場合。
あるいはしこりの大きさが5cm以上でわきの下あるいは胸骨の内側のリンパ節への転移がある場合。
局所進行乳がんと呼ばれる。

このステージでの治療法

手術が可能な乳がんです。 しこりの大きさによって術式(部分切除術、または両胸筋温存乳房切除術)が選択されます。
手術の後、手術で切除した標本を顕微鏡で検索します(病理組織学的検査)。 病理組織学的検査によって、がんの大きさ、わきの下のリンパ節転移の数、組織学的異型度(細胞分裂の数やがん細胞の形態によって決められる悪性度の指標。 「組織学的グレード」とも呼ばれます)、ホルモン受容体の有無などを調べ再発の危険性を評価します。
そして再発の危険性が高いと判断された場合、その再発の危険性の大きさ、年齢や月経の状況、ホルモン受容体の有無に応じて、術後に再発を予防する目的の薬物療法(術後薬物療法)を行います。
またがんの広がりや選択した術式に応じて術後に放射線療法が勧められる場合もあります(術後放射線療法)。
IIIa期の場合、またはII期でもしこりが大きい場合には先に抗がん剤治療を行い、手術をその後に行うことがあります。
これを「術前化学療法」といいます。術前化学療法には、乳房のしこりの縮み方によって抗がん剤の治療効果がわかる、またうまく小さくなれば乳房の形を残す手術(乳房温存手術)が行える可能性が出てくる、という利点があります。
手術と抗がん剤治療のどちらを先に行っても、その順番は再発のしやすさに影響を与えないということがわかっています。

IIIb、IIIc期

IIIb期: しこりの大きさやわきの下のリンパ節への転移の有無にかかわらず、しこりが胸壁にがっちりと固定しているか、皮膚にしこりが顔を出したり皮膚が崩れたり皮膚がむくんでいるような状態です。
炎症性乳がんもこの病期に含まれます。
局所進行乳がんと呼ばれる。

IIIc期: しこりの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移のある場合。
あるいは鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある場合。
局所進行乳がんと呼ばれる。

このステージでの治療法

原則として手術ができない乳がんです。 薬物療法、放射線療法を行ってしこりが小さくなり、手術が可能になれば手術を行う場合もありますが、この病期における手術の意義はまだはっきりしていません。
薬物療法を行う前に乳房のしこりに対してがん組織の性格を調べるための「生検」(しこりの一部分、またはしこり全体を採取し、病理組織学的検査を行うこと)を行います。
病理組織学的検査の結果に基づいて使用する薬を選択することもあります。

IV期

遠隔臓器に転移している場合です。乳がんの転移しやすい臓器は骨、肺、肝臓、脳などです。

このステージでの治療法

乳房のしこりか転移病巣の生検を行います。
この病期は全身にがんが広がっている状態なので、手術によって乳房をとることには意味がありません。
再発した乳がんと同様に、病理組織学的検査に基づいて薬の治療すなわち全身治療を行い、がんの進行を抑え、がんによる症状を抑えます。
骨転移や脳転移などによる部分的な症状を和らげるため、放射線照射や手術が行われることがあります。

再発乳がん

乳房のしこりに対する初期治療を行った後、乳がんが再び出てくることを「再発」といいます。 通常は他の臓器に出てくること(「転移」と呼びます)を指し、IV期の乳がんとあわせて「転移性乳がん」と呼びます。
手術をした乳房の領域に出てくることは「局所・領域再発」と呼んで区別します。

このステージでの治療法

乳がんの手術をした場所やその近くだけに再発した場合(局所再発)には、その部分だけを手術で切除したり、放射線治療を行ったりすることもあります。
遠隔転移が認められた場合には、がんは全身に広がっているので、原則として全身治療すなわち薬物療法を行い、全身に散らばったがんがふえるのを抑える必要があります。 薬の治療は、がんの広がりや乳がんの性質に応じて選択されます。 がんが遠隔転移をきたしている場合には病気を完全に治すことは困難です。
がんの進行を抑えることと、転移によって出る痛みなどの症状を和らげ、なるべく日常生活を支障なく送ることができるようにすることが治療の目的となります。治療にあたっては治療効果と副作用のバランス、そして何よりも患者さん自身の価値観が重要です。日ごろから担当医とよくコミュニケーションをとり信頼関係を築くことが非常に大切です。
症状をとるためには、全身的な薬物療法の他に病状に応じて局所療法も行います。
痛みや骨折、神経圧迫の危険のある骨転移部位に放射線治療を行ったり、がん性胸水、腹水により呼吸困難や腹部の張りが強いときには、針を刺して水を抜いたりします。 骨転移により神経が圧迫されたり、骨折した場合には整形外科的手術が行われることもあります。
また、脳に転移した場合には放射線療法や手術が行われることもあります。



国立がんセンターがん対策情報センターより抜粋